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小原 由夫氏のサイバーナビXシリーズ試聴レポート  オーディオ&ヴィジュアル評論家 小原 由夫氏 「超絶サウンドの真打ち登場」サイバーナビXシリーズ徹底試聴! 小原 由夫氏のサイバーナビXシリーズ試聴レポート  オーディオ&ヴィジュアル評論家 小原 由夫氏 「超絶サウンドの真打ち登場」サイバーナビXシリーズ徹底試聴!

【著者】小原 由夫氏 【著者】小原 由夫氏

 ここ数年、カーナビの音質向上が著しいことは知っていた。しかし、それでもオーディオ専用ヘッドユニット等と比べれば、サウンドクォリティはまだまだという認識だった。本機に出会うまでは…。
 いうまでもなくカーナビの本質は、運転時の道案内である。時々刻々と変わる道路状況を適宜反映させながら、いかに短時間かつスムーズにドライバーを目的地まで導くかが機能の中枢だ。ディスプレイの見やすさはもちろん、人間工学に基づく操作性とその連携性も性能として求められることだろう。
 一方で、ちょっと視点を変えてみると、移動中のドライバーや同乗者にいかにストレスなく快適な空間を提供するかの“サービス”という点から、良質な音で音楽を奏でるという側面も、“案内人”の一環として望まれていると言っていいかもしれない。だからこそ近年、音のいいカーナビが支持されているとも言えよう。
小原 由夫氏
小原 由夫氏
carrozzeria X
 そうした案内人としての役割に、「サイバーナビXシリーズAVIC-CZ902XS」はとびきり長けていたのである。ナビゲーションの性能はもちろんのこと、音楽を奏でる役割においても、前人未到の高い次元に達していると私は感じた。
 端的に言えば、「AVIC-CZ902XS」は、「AVIC-CZ902」のオーディオ部にメスを入れ、音質強化を図ったモデルだ。型番末尾に付された“XS”が特別なコンセプトを体現している。具体的には、パイオニアが長年推し進め、蓄積してきたカーオーディオシステムの最高峰『carrozzeriaX』のテクノロジーやエッセンスが惜し気もなく注がれているのである。すなわち本機は、ハイエンド・カーオーディオのDNAを宿したカーナビなのだ。
 私の印象では、日頃愛車の車内でcarrozzeriaXとRSスピーカーで組んだサウンドを聴いているこの耳に、「AVIC-CZ902XS」の音はそれらに比肩し得るだけでなく、部分的には超えているのではと感じさせたのである。
それは主にハイレゾ音源に対する順応性なのだが、今回私は自宅の仕事場のオーディオシステムで本機を聴くにおよび、ハイレゾならではの豊富な情報量と滑らかなテクスチャー再現において、本機はハイエンド・ホームオーディオのクォリティにも迫るのではないかと感じたぐらいなのだ。
 「これがカーナビの音なのか!」と、私は目の前にある機器に何度も目をやった。それは紛れもなく液晶タッチパネルを備え、無数のハーネスが接続された見慣れた四角い塊に相違なかった…。
 「AVIC-CZ902XS」と、「AVIC-CZ902」を横に並べて見比べた時、真っ先に目に付くのは筐体の違いだ。前者は徹底的にノイズを抑止する目的から、銅メッキシャーシを始め(カーナビ初)、銅メッキビスまで採用。しかもそれらをただ闇雲に使うのでなく、適材適所に用いている点がミソ。つまり、効果をしっかり吟味しながら使っていることの証である。
小原 由夫氏
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carrozzeria X
 例えばシャーシ右側は全面的に銅メッキビスを使っているが、一方の左側には使っていない。これはシャーシのインピーダンスをコントロールすることでノイズを逃がす方向を一元管理しているから。また、中間シャーシにも銅メッキを施し、絶縁や振動対策を図って質検討したものが採用されている。これらが聴感上のS/Nや微小信号の実在感に貢献していることは、後ほど記すとしよう。
 「AVIC-CZ902」もサイバーナビの名称に恥じない音質設計が成されたモデルだが、やはりそこにはコスト的な制限が設けられている。その点、「AVIC-CZ902XS」では、設計陣が後ろ髪引かれる思いで諦めたパーツが随所に当用されているのがセールスポイントだ。
 そのひとつが、音質を司る増幅回路のオペアンプ。オーディオ用としては当代最高峰といわれる新日本無線社製のMUSESシリーズが6基搭載されているのだ。
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具体的には、I/V変換用にMUSES8920を4基(フロントとリアのL/Rチャンネル)、ローパスフィルター用に同8820を2基積んでいる。低雑音/低歪率/高スルーレートといったハイスペックを誇る、非常に高価なパーツだが、内外数社の著名オペアンプとの比較試聴を経て、やはり他には代えがたい音質的魅力があることから採用を決めたという。
 パワーアンプ部の電源用アルミ電解コンデンサーは、部品メーカーと共同開発をしており、電解液をオーディオ用途に配合した上でさらにスリーブ素材にも手が加えられている。「AVIC-CZ902」ではスリーブにPETを採用しているのだが、今回採用されたものは若干柔らかく、内部損失の高いポリオレフィン製。筐体の制振化とも相まって、ここぞというところで重心の低い安定したエネルギーバランスを発揮する後ろ盾となっている。
carrozzeria X
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小原 由夫氏
 同様にトロイダルコイルも「AVIC-CZ902XS」専用に起こした。コアの材料は「AVIC-CZ902」と共通だが、その厚みやコイル(銅線)の線径/ターン数を新たにチューニングしたことで、スピーカーの駆動力、とりわけローエンドの制動力が一段と高まっている。
 デジタル信号の制御に関しては、発振器の位相雑音に着目し、より低雑音のマスタークロックを採用。さらにD/A変換部の抵抗にオーディオに最適な非磁性体抵抗器を組合せることで、ノイズ特性を従来比5dB改善すると共に、ジッターの抑制にも成功している。
 「AVIC-CZ902XS」はデザイン面でもプライム感をアピールすべく、フレームのピアノブラック仕上げ、スイッチのROSE GOLD蒸着塗装など、オーナーの所有欲を満たすフィニッシュを纏った。機能や音質だけでなく、コスメティックにおいてもハイエンド・カーナビを標榜しているのだ。
小原 由夫氏

パイオニア創業80周年を記念した80台限定のサイバーナビ

なお、今回はパイオニア創業80周年を記念して、「AVIC-CZ902XS」に、シリアルナンバープレートやスペシャルボックス、レコチョク・プリペイドカード(10,000円分)等の特典をパッケージングした、限定80台のスペシャル版「AVIC-CZ902XS -80」も準備される。こちらは「パイオニア・カロッツェリアeショップ」での直販限定。売り切れ必至の早いもの勝ちだ。

 前述のように、今回は私の自宅仕事場のホームオーディオシステムで「AVIC-CZ902XS」を試聴したのだが、「AVIC-CZ902」を横に並べた比較試聴が叶った。試聴音源には、SDカードに収録したPCM、DSDのハイレゾ・ソースを用いている。

小原 由夫氏
小原 由夫氏
小原 由夫氏
 最初に聴いたのは女性ヴォーカル。「AVIC-CZ902XS」は、声に乗る色艶や微細なニュアンス描写がたいそうリアル。「AVIC-CZ902」もかなり生々しい質感再現力を持っているのだが、こうして聴き比べると、前者がより鮮度が高いことがしっかり実感できる。「AVIC-CZ902XS」には表情に硬さや冷たさが一切なく、とても包容力がある音に感じられ、人肌の温度感が伝わってくるのである。
 DSD2.8MHz音源のジャズ・ピアノ・トリオでは、鍵盤の上を躍動するような指の動きがビジュアル的に見えるよう。ベースのピチカートの運指やドラムのスティックの様子も鮮やかに、メロディーの抑揚、リズムのダイナミズムが迫真的に迫ってくる。「AVIC-CZ902」も3者の距離感や音の密度が素晴らしく、カーナビとしては異例の解像力なのだが、スピーカーの駆動力、低域の瞬発力の差は歴然だ。吟味されたトロイダルコイルやアルミ電解コンデンサーの威力だろう。
小原 由夫氏
我が家のリファレンススピーカー/TAD Reference-Oneをまさかカーナビがここまでドライブする日が来ようとは!「AVIC-CZ902XS」の制動力と低域の解像感、恐るべしである。
 最後に聴いたフルオーケストラのクラシックも圧巻だった。静寂の中からピアニッシモでメロディが奏でられ始め、それが徐々にクレッシェンドしていくのだが、楽章冒頭の無音部のノイズの質がまるで違う。「AVIC-CZ902XS」のそれは、ノイズレベルの低さだけでなく、ざらつきが一切ない。この辺りは、銅メッキシャーシの制振性とローインピーダンス特性が効いているに違いない。クレッシェンドで次第にエネルギーがブーストされていき、ティンパニやグランカッサの打楽器群が畳み掛けるようにリズムを刻むところの重厚さと精密感で、「AVIC-CZ902XS」は磐石の揺るぎなさを示したのである。
小原 由夫氏
小原 由夫氏
小原 由夫氏
 当初、今回の自宅テストを受け、果たして大丈夫だろうかと疑心暗鬼だったのだが、川越の同社開発部でも拙宅と同じTAD Reference-Oneをリファレンススピーカーとして使っているとのこと。どうりで十全に鳴らせるはずだと合点がいった。それほど難攻不落なスピーカーを相手に決して怯むことなく、一方では、より厳重な対策が望まれる振動やノイズにも充分吟味された「AVIC-CZ902XS」。その試聴を終えた私は、ハイエンド・カーナビの世界に遂に超絶サウンドの真打ち登場という感を強くした次第だ。
小原 由夫氏
サイバーナビ Xシリーズ商品企画担当と開発陣

今回お話しを伺ったサイバーナビ Xシリーズ
商品企画担当と開発陣。
筆者と向かって右側がパイオニア株式会社
市販企画部 マルチメディア企画1課 内田 有喜氏
筆者向かって左側が同社 ハード設計部 6課の
郷 建彦氏(右)と同6課の浅岡 大輔氏(左)。

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