野口 綾子

「サウンドバムって何?音を録るみたいだけど。
よくわかんないよね。」
「最後には夢中で音を録ってたりね。(笑)」

友人とのこの会話が、私とサウンドバムの出会いだった。
案の定、シベリア滞在最後には夢中になっていた。

★ 始まり ★
私からシベリアは遠かったが、
実際は新潟からハバロフスクまで
飛行機で2時間という距離だった。

驚くことに新潟にはロシア語表示が多い。
交流が深いらしい。
耳なれないロシア語が続く。
思い出す単語と言えば、ありがとうの
「スパスィーバ」だけ。
シベリアに足を踏み入れる。
やっぱり寒い・・・。

★ 町並み ★
想像以上にきれいな洋風の建物が立ち並ぶ。
天気のせいか、「静寂」という言葉がぴったりだった。
なぜか心が落ち着く。
考え事をしている人にはお勧めな場所だ。

★ 町からキヤ村へ ★
本格サウナ体験。
小屋の中で、ビール&すいかを楽しみながら
サウナを堪能する。
すごい!

汗をかいた後に外に出ると
「気持ちいい!!」の一言につきる。
この気持ちよさは、
きっとここでしか体験できない気がした。

★ MDレコーダーをついに借りる ★
2日目、ついに思いきって聞く。
「サウンドバムって何ですか?」
西村さんが、落ち着いた声で説明してくれた。
(詳しくはHPで!)

「私も音を録ってみたい」
と思うようになり、MDレコーダーを借りた。
それが私の「音」の世界の入口だった。

★ 野生動物センター ★
シベリア・トラなどが保護をされている
野生動物センターに行く。
ツキノワグマの音を録ってみる。
不思議な感じだった。
普段あまり「音」に意識していなかったせいか、
新鮮に聞こえる。

★ クラスヌイ・ヤール村へ移動 ★
村に住んでいるウデゲの人達の家に
ホームステイ。
その日の夜は、鹿の肉でお迎えだった。
食事は本当においしかった。

★ キャンプ ★
ウデゲの猟師達とエンジンボートでビギン川の上流へ。
目の前には、広大な混交樹林が広がっていた。

その日は川辺でテントを張る。
夜、猟師の人達と焚き火の周りで
ウォッカを飲んで歌って楽しんでいた。

焚き火から離れ、星を見に行く。
側でささやく声、
「見えない星も見えてくるよ。」
その言葉通り、目に映る星の数は増える。

その日の夜は本当に寒かった。
初めて寒くて眠れないという経験をした。
朝は霜の世界が広がっていた。

★ ホームステイ ★
ホームステイ先に戻った夜は、またウォッカ
を楽しむ。そして外に出る。

星を見た瞬間、地球は本当に丸いことを改めて感じた。
星が円を描くように右、左、上に見えた。
文字では表現できないが、本当に凄かった。

感動しているそんな私の側で、ウォッカを飲んで
熱くなっている2人が気持ち良さそうに歌っていた。
一方で、1人はこの夜の雰囲気にピッタリな歌を歌っている。
この空間がとても心地よかった。

★ お祭り ★
年に一度のお祭り。
周辺の村から、様々な少数民族の人達が集まる。
踊り、歌、村によって様々だ。

猟師の人達や村の人達は、伝統を大切にし、
自然からの恩恵を大事にする。
これからも、このことを大事にしてほしいと
心のどこかで願っていた。

★ シベリア鉄道 ★
ついにシベリア鉄道に乗る。
まるで『世界の車窓から』(テレビ朝日の短い番組)
の気分。

近づいてくる音、乗っている間の音。
イメージとしては『銀河鉄道の夜』を連想させる。
そうして、シベリアの旅は終わりに近づいていった。

★ 最後に ★
今回は「音」を通じて気づくことの多い旅だった。
水の音、鳥の声、人の声、風の音を聴くのは、
きっと珍しいことではないのかもしれない。
しかし、当たり前の音を珍しく感じている自体、
私の「音」に対する感覚は鈍ってしまっていたのだと思う。

報告会で聴いたシベリアの「音」は、
その時のことを鮮明に思い出させた。
MDレコーダーで録ることは、きっと大事なことを気づかして
くれる手段でしかないのだと思う。

だから日常生活の中で、ふと目を閉じれば
「音」を感じることができる。
私はこの感覚を、これからも大事にしたいと思う。

(01/12)

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